20歳前後、大学生の頃の出会いって独特だなと、本作を観ると改めて感じます。社会的に成人とされる年齢になり、でも中身はまだ子どもの部分があって、恋愛への理想もある。だから、麦と絹のように好きなものがほとんどすべて同じというような人に出会ったらお互いに夢中になるのも当然です。ここで大人なら、悲しいかな「こんなに何でも同じものが好きなんて、何か怪しい」とか思っちゃったりする人もいそうですが(笑)、麦と絹が素直にときめく姿はとても微笑ましいです。そして本作は前半で幸福感やラブラブ感をマックスに高めていくからこそ、後半にメリハリが利いておもしろいんです。後半は急に恋愛の現実を叩きつけてくる内容になっていますが、結末は好き嫌いが分かれるような気がします。というかその好き嫌いに、観る側各々の恋愛観が表れるはずで、そこまで含めて観るおもしろさがある作品だと思います。でも、何より素敵なのは、麦と絹が全力で恋をしているということ。本作を観た皆さんが、一生に1度はこういう恋をしたいと、恋に前向きになれたら良いですね。
ラブラブな2人がだんだん大人になって、生活のなかですれ違いが生まれてくる様子も描かれています。デートで一緒に本作を観ながら、2人にとってどんな選択が最善かを考えて、鑑賞後に話し合うと、お互いの恋愛観や人生観がかなり見えてくると思います。ベテランカップルの場合は、もしかしたら目をつむっていた自分の本音に気付いてしまって、1人で熟考したくなるかもしれないので、1人で観るか、親友を誘って観るほうが良いかもしれません。友達以上恋人未満の人は早い段階で相性に気付くほうが良さそうなので、敢えて一緒に観てはどうでしょうか。
高校生、大学生は恋愛の予習として観るのをオススメします。現実を突きつけられる部分もありますが、皆に当てはまるケースというわけではありません。もちろん、大人になるにつれ、それまでの恋愛の仕方のままではいられないことも多々出てきますが、それは人それぞれ、カップルそれぞれの価値観や対処によって異なります。なのでこれは1ケースとして観て、自分ならどうするかを考えてみると、自分の恋愛観や人生観を少し明確にできるでしょう。
『花束みたいな恋をした』
2021年1月29日より全国公開
東京テアトル
公式サイト
© 2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
TEXT by Myson