REVIEW

マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』ジャスミン・トリンカ

REVIEW

本作の主人公マリア・モンテッソーリが開発したモンテッソーリ教育は、ジェフ・ベゾス(Amazon創業者)、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン(Google創業者)、テイラー・スウィフト、藤井聡太などが受けた教育として、注目を浴びています。他にもアンネ・フランク、ピーター・ドラッカーなどもモンテッソーリの幼稚園や学校の出身、バラク・オバマなどアメリカの大統領の中にもモンテッソーリ教育を体験した方が何人かいるそうです(映画公式資料)。
そして、本作の監督及び共同脚本を務めたのは、思想家、哲学者、文芸批評家として知られるツヴェタン・トドロフ(1939~2017年)を父に持つレア・トドロフです。トドロフ監督は本作を作るきっかけをこう語っています。

この映画を制作するきっかけとなったターニング・ポイントは、私の娘の誕生でした。娘は遺伝性の病気を持って生まれ、私はすぐに、母親になるだけでなく、特別なニーズを持つ子どもの母親になるのだということを理解しました。(映画公式資料、レア・トドロフ監督インタビューより)

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』ジャスミン・トリンカ

本作には、実在の人物マリア・モンテッソーリ(ジャスミン・トリンカ)と、想像上の人物リリ・ダレンジ(レイラ・ベクティ)が登場します。本作ではモンテッソーリ教育がどのように生まれたか、どのような方法が取られていたかを映し出してはいるものの、一人の女性であり、母であり、学者であるマリア・モンテッソーリ自身の物語として、息子への愛情、仕事への情熱、恋愛において揺れ動く心情を描いている点が印象的です。本作のフランス語のタイトルは“新しい女性”だそうで、「一般的に歴史家が使う表現で、1900年代に専門職や学術的なキャリアを獲得することに成功し、知識によって社会での地位を主張した、フェミニストで教養があり自立した女性たち」を指すそうです(映画公式資料)。

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』ジャスミン・トリンカ

劇中でも描かれているように、マリアが生きた時代、学問の道に進むことは難しく、進んだとしても女性は男性の影に追いやられ、業績も自分のものとして訴えにくい状況にありました。また、子どもがいるとなれば、なお行く手を阻まれる状況で、マリアは苦渋の決断を迫られます。その決断と覚悟こそが、モンテッソーリ教育の真髄は愛情であるという姿勢に繋がっていると示すストーリーとなっています。

デート向き映画判定

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』ジャスミン・トリンカ

時代の変化に伴い、女性が社会進出しやすくなってきたとはいえ、まだまだ性別による社会的役割に関する古い考えは残っていると感じます。だから、生涯を共にすると考えているカップルは、2人のキャリアについて話し合うきっかけに、本作を観るのもアリでしょう。まずは、本作のマリアの状況や決断について感想を述べ合うだけでも、お互いの仕事観を知ることができそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』ジャスミン・トリンカ

本作では、マリアの息子への思いと同時に、施設で接している子ども達への思いが両方描かれています。皆さんは、子ども目線で親としてのマリア、先生としてのマリアを観て、大人とは異なる感情を抱くのではないでしょうか。今は共感するのが難しくても、大人になってから再度観ると、理解できる部分が出てくるかもしれません。

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』ジャスミン・トリンカ

『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』
2025年3月28日より全国順次公開
オンリー・ハーツ
公式サイト

映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© Geko Films – Tempesta – 2023

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年3月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

「Kodansha Studios 設立発表会見」野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)、 クロエ・ジャオ(Kodansha Studios 最高クリエイティブ責任者)、 ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO) 映画業界に新風を吹かせられるか?2025新レーベル発足および官民の取組みまとめ

今回は近日発足された新レーベルと、官民の取組みについてまとめて紹介します。

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

映画『金髪』白鳥玉季さんインタビュー 『金髪』白鳥玉季さんインタビュー

今回は『金髪』で生徒の板緑役を演じた白鳥玉季さんにインタビューさせていただきました。“金髪デモ”を起こすキーパーソンである板緑を演じた感想や、撮影裏でのエピソードを直撃しました。

映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉 TOKYOタクシー【レビュー】

クリスチャン・カリオン監督『パリタクシー』を原作とした本作は、東京にある柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設までの道のりを舞台に、山田洋次監督が映画化…

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『果てしなきスカーレット』
  2. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  3. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉
  4. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  5. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP