REVIEW
怖い、ものすごく怖い。いろんな意味で本当に怖いです。こんなことがあるなんて信じられないけれど、本作は2003年に福岡市の公立小学校で起きた実話をベースにしています。

まず冒頭から映し出される一連のやり取りは、かなり恐ろしい描写となっています。“殺人教師”という響きもあり、一旦主人公の小学校教諭、薮下誠一(綾野剛)に対するイメージが固定されます。でも、法廷シーンで藪下は予想外の反応を見せます。そこから、視点が変わり、この出来事の真相が映し出されていきます。

真相が明かされ始めると、すぐに自分が根拠のない情報に踊らされている人達と同じ側にいることに気づかされます。つまり、冒頭のシーンはそういう状態を観客に体感させる上で相当な効果を発揮しています。

何が起こっているのかは早々にわかり、そこからが本当の怖い話といえます。俳優陣の迫真の演技のおかげもあって、観ていて、恐ろしさ、苛立ち、もどかしさというようなさまざまな感情が一気にこみ上げてきます。

ネタバレを避けるために具体的には書かないでおくとして、悪いのは大人の保身だなと痛感します。本作には、いろいろな立場の大人がその場しのぎの保身のため、体裁のため、自分のプライドのためというように、それぞれのやり方で保身をした結果が描かれているように感じます。

同じような状況に置かれたら上手く対処できる自身が持てないほど最悪な人物を相手にするとして、根本的には問題に真正面から向き合わなければいけないと切に思いました。本作で起こっている状況はSNSの普及により、一層身近な現象になりました。これは誰にとっても他人事ではありません。

また、本作を観ていると、教師や学校と保護者の関係についても根深い問題があるとわかります。そこかしこに事なかれ主義が蔓延っている状況も、問題を起こす要因となっているのがわかります。本作を観ると、目が覚める部分が大いにあります。ぜひ多くの大人に観て欲しいです。
デート向き映画判定

最初から最後まで緊張感が続き、ストーリーに没頭すると思うので、デートで観ているという感覚にはなりづらいと思います。でも、観終わった後には話したくなる内容で、自分達が同じような状況に巻き込まれた場合にどう対処するか話してみると、お互いの価値観を知る機会にもなるでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定

小学校で起こった出来事という点で、就学中の皆さんは身近に感じられるでしょう。自分の考えをはっきり言う、違うことは違うという、助けが必要な時はいう大切さを実感させられる内容です。また、世の中の情報にどれくらい信憑性があるのかを考えるきっかけにもなります。反面教師として学ぶべき事柄が多くあるので、観ておいて損はありません。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
2025年6月27日より全国公開
PG-12
東映
公式サイト
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©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会
TEXT by Myson
関連作
「“でっちあげ 福岡『殺人教師』事件の真相”」福田ますみ 著/新潮文庫刊
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情報は2025年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
