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『MANRIKI』斎藤工さん、永野さんインタビュー

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映画『MANRIKI』斎藤工さん、永野さんインタビュー

今回は、映像クリエイティブ集団“チーム万力”として共に映画『MANRIKI』を手掛けた斎藤工さん、永野さんにインタビューをさせて頂きました。濃厚なお話をたっぷりお聞きし、映画愛を存分に感じさせて頂きました。

<PROFILE>
斎藤工(さいとう たくみ):整顔師役/企画・プロデュース
1981年8月22日東京都生まれ。高校生の頃からモデルとして活動し、国内のショー、パリ・コレクションなどで活躍。2001年に映画『時の香り~リメンバー・ミー~』で俳優デビュー。その後、映画、ドラマと多くの作品に出演。これまでの映画出演作には、『愛と誠』『団地』『シン・ゴジラ』『昼顔』『去年の冬、きみと別れ』『のみとり侍』『麻雀放浪記2020』ほか多数、公開待機作として、『ヲタクに恋は難しい』『糸』『シン・ウルトラマン』などがある。また、“齊藤工”名義で映画監督、白黒写真家としても活躍。2012年に短編『サクライロ』で映画監督デビューを飾り、2015年には『半分ノ世界』が、国際エミー賞デジタル・プログラム:フィクション部門にノミネート、セルビア日本交換映画祭アイデンティティ賞受賞など高い評価を得た。監督7作目にして初の長編となった『blank13』では、上海国際映画祭アジア新人賞部門最優秀監督賞を受賞。『MANRIKI』では同名義にて企画・プロデュースにも携わっている。パリ・ルーブル美術館でのSALON DES BEAUX ARTS 2018にてモノクロ写真「守破離」がPhotography部門Bronze Medalを受賞。また、“cinéma bird(=移動映画館)”の発案者であり、映画館のない地域で開催し、映画を届けている。

永野(ながの):助手役/企画・プロデュース・原作・脚本
1974年9月2日宮崎県生まれ。お笑い芸人として活躍する一方で、斎藤工、金子ノブアキ、音楽活動のみならず俳優としても活動するSWAY、映像クリエイター清水康彦というメンバーが集う映像クリエイティブ集団“チーム万力”に所属。『MANRIKI』では、企画・プロデュース・原作・脚本を担当すると同時に、助手役としても強烈な存在感を放っている。

臭いものに蓋をしないで、嗅ぎにいった先に見えるものとは?

映画『MANRIKI』斎藤工、永野

マイソン:
本作には美に執着する女性が登場します。お2人が普段女性を見ていて、何でそんなことをするんだろうって不思議に思われることってありますか?

永野さん:
僕個人は美への執着に関しての批判みたいな気持ちは低くて、どっちかというと、人と比べることに対しての浅ましさみたいなのは不思議に思いますね。

斎藤工さん:
僕も永野さんの意見に近くて、日本人って、ランキングを付けたがるじゃないですか。順位というか、仕分けみたいなものを決めようとする。僕も何とかランキングみたいなのに対象とされがちなんですけど、それってすごく残酷だなって思いますね。そして、男性みたいにグランプリだけを決めるのではなく、女性は順位を決めるところがあるように思うんです。そういう時、女性のほうが現実的で残酷なのかなと思います。だから、その思考の矛先が自分自身に向いた時に、ちょっと僕らの思わないところまで、行ってしまうのではないかという怖さは感じますね。抽象的に終わってもいいのに、それをより具体的な形に詰めていくとところがあるというか、「さらに行くんだ」というところが、人に対しても自分に対しても女性のほうが厳しいのかなって、思う時があります。それが良いのか悪いのかはわからないですけど、そういう面を見ると、僕は女性を不思議に思いますね。

映画『MANRIKI』斎藤工さんインタビュー

マイソン:
そう言われてみると、うちのサイトでもランキングとかをしているので、申し訳ないなって思います。確かに条件とか、流行とかそういうところにハメようとして、自分らしさと別のところで人と比べているみたいなことは世の中に多いかも知れませんね。あと、この映画を観ていて、客観的に自分ってどう見えているんだろうっていう怖さをすごく感じました。ホラー的な怖さももちろんあったんですけど、どちらかというと人をすごく鋭く見られているなっていうところがおもしろかったです。普段お2人は人を観察するほうですか?

斎藤工さん:
僕はしますね。小学校が電車通学だったんですけど、電車でみかける人が興味深くて、勝手に想像するんですよ。目の前に7人座っていたら、7通りのそれまでの人生みたいなものを、断片をみただけで、ちょっとドラマチックに想像してしまうみたいなところがあります。僕らの仕事についてもそうなんですよ。瞬間に見えるもので「奧が見えるか見えないか」という短距離走とか一発勝負な気がするんです。そういうこともあって、観察はすごく好きですね。

永野さん:
そうですよね。工くんは僕のネタにも「映像が見える」と言ってくれて、僕はどっちかというとそうでもないんです。そこがちょっと天然なので、何か言われたことをネガティブに捉える能力はすごく長けているんですけど、この能力をどうしようかっていうところで、『MANRIKI』で使えたから良かったんですけど、工くんは絶対に奥深く見る人なんだろうなと思いますね。だって僕が全然まだ売れていない時のコントから「映像が見えます」とか言うんですから。

映画『MANRIKI』永野さんインタビュー

マイソン:
じゃあ、お2人が見るところが違うからこそ?

斎藤工さん:
映画を観ていてもそうなんですけど、人がすごく美しく綺麗でカッコ良いとか華やかな瞬間に、僕はあんまり感情移入ができないんです。綺麗だなと客観はするんですけど、本当に内側に秘めたネガティブな、誰にも見せないような感情が見えた時に「これは僕の話かも知れない」って思うんです。ポジティブな部分で繋がっている繋がりって結構脆いんじゃないかなと思う時があるし、痛む時に人は、より繋がったりするんじゃないかなと思います。永野さんのネタを見ている時、僕はそういう痛みが蘇ったみたいな感覚で、他人事じゃないなって感じました。良い映画についても、必ずそうだと思うんですよ。アカデミー賞作品賞とかカンヌ国際映画祭のパルムドールとかって、差別貧困というものを正面から描いていて、国は違えど同じだって、誰しもが抱えている十字架がリンクする。永野さんのネタにはそれがあって、入っていく角度が違うけれども、僕にも同じところがあるっていうふうに思って、その世界に心酔していき、ファンになったというのがあります。

マイソン:
そういった意味で映画的な感覚は、一緒だなと感じられたんですね。

永野さん:
『MANRIKI』という映画は完全に一緒になりましたし、自分の感覚ですけど、最近優しい言葉とかが世の中には溢れつつ、痛いことやすごくネガティブなことに対して皆3通りくらいの解釈しか使っていない気がするんです。すごく優しい言葉でいこうみたいな感じでそれはそれで良いんですけど、「あれ、何でこれだけかな?なんか取り残されてるな、このノリ」みたいなのがあったんです。それで僕は世の中の何となく外れている人に自ずとスポットを当てちゃったんですけど、そのノリに全くついていっていない奴らの感情、その臭いものに蓋をせず、嗅いだ先に希望はあるんじゃないかって嗅ぎに行ったみたいな。蓋をしても臭いものはそこにずっとあるわけで、その蓋を開けて発酵して溶けるまで嗅いだみたいな。

斎藤工さん:
確かにチーズってそうやって生まれたと思う(笑)。

永野さん:
ハハハ!『MANRIKI』って、劇場公開前なので一般の方の気持ちはまだわからないんですが、プチョン国際ファンタスティック映画祭で賞を頂いたり、「この方からこんな言葉が頂けるんだ!」ということがあったので、「皆そうだったんじゃん!」「やっぱりそうでしょ」って、皆おかしいと思ってたんだよな、この世の中をって。

映画『MANRIKI』永野

マイソン:
皆そういうことに気付いているってことですよね!ところで、お笑いと恐怖って紙一重だなって、コメディやホラーを観ていてよく思うんです。『MANRIKI』でも、怖いけどだんだん笑えてくるシーンがあって、演じている側はどんな気持ちでやっていらっしゃるのでしょうか?

永野さん:
作る時に監督と話していたんですけど、『MANRIKI』に関しては、冷静な人がいるのが嫌だったんですよ。自分にとって最初で最後かも知れないくらいの気持ちでこの映画に関わったので、一応芸人というのもあって、ツッコミと言いますか、俯瞰で見ている人が画面にいたりするのが嫌だったんです。全員が悲惨な状況にいるのを観て笑って欲しいみたいなのがあって、本当にそれは気を付けました。まともというか、すごく多数派の意見を持った人がいるつまらなさみたいなのを感じていて、工くんも「すごくマイノリティな感じを永野さんは見ますよね」と言ってくれるんですけど、すごくマイノリティな奴をマジでやっているという。しかもこだわったのは、「マジでやっているこいつらって滑稽でしょ」っていう神の視点みたいな製作側のでもないという、全員で没頭した映画です。自分のお笑いもそうですけど、なかなかそれって理解されないんですよ。幼稚に見えちゃうし、バカじゃないのって見えるんですけど、そこはすごく考えました。全員その場では集中して、それがおもしろいと思いました。

斎藤工さん:
おもしろいことをやろうとしている俳優が1番キツいなと思っていて、唯一僕の立場でできることと言ったら、懸命に向かっている姿が端から見たら滑稽であるっていうことでしかないんですね。バラエティに出た時もそうですけど、懸命であるっていうことしかできなかった。

一同:
ハハハハハ(笑)。

斎藤工さん:
お笑いというジャンルに対しては、恐怖心を持って挑まないと怖いなとは思っていますね。

マイソン:
では、さきほど永野さんが、世の中的に痛いことやネガティブな事に対して皆3つくらいの解釈しか持っていないとおっしゃっていましたが、わかりやすい映画が良いみたいな風潮は感じますか?

永野さん:
感じますね。「この映画にお金払ったんだから、この感情くれよ」「感動させてくれよ」「理解させてくれよ」みたいなニーズに応え過ぎて、寄せ過ぎているのに失敗していないっていう悲しさ。失敗してたら笑い話なんですけど、工くんが悲しんでいるのは、それが失敗してないってことなんですよね。

斎藤工さん:
でもそういうわかりやすい映画がヒットしていながら、『ジョーカー』みたいな作品もちゃんとヒットしているんですよね。

映画『MANRIKI』斎藤工さんインタビュー

マイソン:
そういった意味でも映画作りって難しそうだなと感じます。では最後に1番影響を受けた映画か、俳優とか監督をお聞きしたいのですが、いかがでしょうか?

永野さん:
僕は影響っていうのは気まぐれで変わってくるんですよ。それこそすごいB級のものに影響を受けたりもしますし、すごい名作にも影響を受けます。最近だと映画解説者の中井圭さんが『MANRIKI』を観て、ニコラス・ウィンディング・レフンの作品のようだって言ってくださって。でもそれはその作品に似ているというよりは、「どこにも近いものが見つからないという点で」って言ってもらったんです。レフン監督の作品は『ドライヴ』と『ブロンソン』を観ていたので、最近『オンリー・ゴッド』を観たら、すっごくおもしろくって。何でおもしろいのかって正直理屈はないんですけど、とんでもない強烈なものを見せられて、そこには別に「こういう風に感じてください」っていうのもなくて、とにかくものすごい時間を過ごしたなって、これは映画館で観たかったです。

斎藤工さん:
劇場で観たらヤバかったですよ。

永野さん:
マジっすか。僕はそういう体験、「あの時その場にいたかった」っていうのを結構思う人で、それこそブルース・リーが亡くなった直後に『燃えよドラゴン』が日本で公開された時の熱狂とか、僕も一緒にいたかったなって。宣伝っぽくなりますけど、そういう意味で『MANRIKI』も映画館で体験して欲しいです。『オンリー・ゴッド』のような映画は、B級、A級とかって関係ないですね。フランチャイズ作品の良さもあるかも知れないけど、僕はそういう映画をわざわざ観たくない。もちろんお客さんが欲しいものを提供するのがプロだっていう人もいるけど、僕は全くそう思わないです。それは別のプロなんじゃないかって。だから僕は今1番影響を受けた映画でいうと、『オンリー・ゴッド』です。

映画『MANRIKI』永野さんインタビュー

マイソン:
なるほど〜。斎藤さんはいかがですか?

斎藤工さん:
ポン・ジュノの『殺人の追憶』か、新作の『パラサイト 半地下の家族』ですね。彼は桁違いの才能を持っている人だと思うんですよ。『殺人の追憶』はポン・ジュノが20代の頃に監督をした作品で、ラストシーンでソン・ガンホが演じた主人公がカメラを見るんですけど、「その目線の意味は?」ってことで、未解決事件をモチーフにした映画なので、韓国でまだ犯人が捕まっていないという状況で、「隣にいる人がもしかしたら犯人かも」っていうメッセージかと思っていたんです。今年の9月にあの事件の犯人は捕まったんですけどね。でもカメラ目線って御法度なので、先日ポン・ジュノにお会いした際に、直接「あれはどうなんですか?」って聞いたら、「あの映画を犯人が観に来たとして、追っていた刑事(ソン・ガンホ)と犯人の目線を合わせたかった」っておっしゃって、それは、映像の中の表現の世界で客席に下りて行ったってことじゃないですか。その演出で、この人は凄まじいなって思いました。当時20代ですよ。ハリウッドに行ったり、『オクジャ/okja』などでスタイルが変わったと僕は思っていたんですけど、その全部の集大成が『パラサイト 半地下の家族』です。これがまた傑作で、傑作で帰ってきたなって。ポン・ジュノは近い将来アカデミー賞監督賞を獲ると思います。そのくらい異次元のフィルムメーカーだなと思っています。ジャンル映画にも造詣が深い方なので、この『MANRIKI』とか、『シン・ウルトラマン』(斎藤工さん主演の2021年公開予定の映画)にも注目してくれていました。『blank13』が今年韓国で公開されたんですけど、そちらも知っていてくれて、遠くない世界にいるんだと思って、『MANRIKI』を観てもらいたくなってディスクを渡したんです。必ず観るって言ってくれたので、同じアジアのフィルムメーカーで、この人と同じ時代に近い畑にいるってことが、それだけで刺激的だなって思いました。

2019年11月16日取材 PHOTO & TEXT by Myson

映画『MANRIKI』斎藤工

『MANRIKI』
2019年11月29日より全国順次公開
R-15+
企画・プロデュース:齊藤工/永野
原作・脚本:永野
監督・脚本・編集:清水康彦
出演:斎藤工/永野/金子ノブアキ/SWAY/小池樹里杏/神野三鈴
配給:HIGH BROW CINEMA、東映ビデオ

整形をしているモデル達ばかりが仕事を得ていく状況に焦りを感じた駆け出しのファッションモデルが、仕事欲しさに⼩顔矯正を決意。彼女は美しい男性整顔師が営む美容クリニックを訪れるが、そこは整顔師の猟奇的哲学と万⼒を使う、恐ろしいクリニックだった。

公式サイト 映画批評&デート向き映画判定

©2019 MANRIKI Film Partners

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