REVIEW
原作者の吉田修一は、「3年間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験」を基に小説を書いたとのことです(映画公式資料)。本作の主人公、喜久雄は任侠の一門の生まれでありながら、歌舞伎の女形の才能を買われ、歌舞伎界の名門、花井半二郎(渡辺謙)のもとで修業を積むことになります。半二郎には跡取りとなる息子の俊介がおり、喜久雄と俊介は良きライバルとして、ともにめきめきと腕を上げていきます。でも、いつまでも同じ立場というわけにはいかず、2人はそれぞれの立場で苦悩します。

本作には歌舞伎のシーンがふんだんにあるだけでなく、複数の演目をしっかり披露しています。歌舞伎役者の家に生まれても、幼少の頃から稽古を積み重ね何年もかけて一人前になっていくところを、歌舞伎役者ではない俳優が演じるのはすごくハードルが高いのは誰しも予想できるでしょう。それでも、喜久雄役の吉沢亮、俊介役の横浜流星ともに自ら演じていて驚かされます。李相日監督は、「吹替を立てずに本来は歌舞伎役者ではない吉沢亮や横浜流星に挑んでもらったのは、『国宝』という小説をベースにした映画としては、まさしく内面的な到達点をめざすことを優先すべきだと思ったからなんです」と語っています(映画公式資料)。

超豪華なキャスティングも魅力です。李監督によると、本作は“吉沢亮ありき”だったそうです。また、俊介役について、「誰に演じてもらうかが非常に重要な要素で、プロットの時点で人選を進めていきました。主役を務める吉沢くんと並び立つほどの存在感を持った俳優でなければならない。そういう意味でも一番キャスティングに悩んだ役」で、候補者から絞りに絞り、プロデューサー陣とも相談の上、横浜流星のストイックさに賭けたと述べています(映画公式資料)。

さらに、少年時代の喜久雄を演じた黒川想矢、俊介役の越山敬達は今や注目の若手俳優ですが、オーディションは2年前だったので偶然実現した共演だったそうです。他にも、渡辺謙や寺島しのぶ、永瀬正敏、田中泯などの重鎮が名を連ねつつ、高畑充希、森七菜、見上愛など人気俳優も出演するほか、人間国宝の四代目坂田藤十郎を父に持つ中村鴈治郎が出演および歌舞伎指導を担当しています。

とてもエネルギッシュで内容の濃いストーリーで、俳優陣の演技にも魅了されるので、約3時間の上映時間もあっという間です。吉沢亮、横浜流星の演技合戦もまるで格闘技のように熱いです。歌舞伎のシーンもスクリーンで観るほうが見応えがあるので、ぜひ一度は映画館でご覧ください。
デート向き映画判定

ラブストーリーは本筋ではないものの、恋愛関係がメインキャラクターの人生に大きな影響を与え、恋愛観を考えるきっかけにできそうです。芸事を職業にしている方や目指している方と交際中の場合は、生々しく感じる内容なだけに、自分の気持ちと向き合いたい場合は1人で観るほうが良いかもしれません。
キッズ&ティーン向き映画判定

主人公の思春期から物語が始まります。特殊な家族、家業の物語ではあるものの、自分の出自によって運命が大きく左右される展開には普遍的な側面もあり、誰もが共通して関心を持てるでしょう。兄弟のように育てられた幼馴染との複雑な関係を観ても、いろいろな感情が喚起されるのではないでしょうか。

『国宝』
2025年6月6日より全国公開
東宝
公式サイト
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©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会
TEXT by Myson
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情報は2025年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

- イイ俳優セレクション/黒川想矢(後日UP)
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