REVIEW
キービジュアルに使われている浴室の写真をよーく見てください。左側にアドルフ・ヒトラーの写真が置いてあります。本作は「英国版『VOGUE』誌の記者として第二次世界大戦中のヨーロッパを取材した、アメリカの先駆的な従軍記者兼写真家」として知られるリー・ミラーの実話です。リーが浴槽に入っている浴室の写真は、ヒトラーとエヴァ・ブラウンがベルリンの地下壕で自殺した夜に撮られました(映画公式サイト)。撮影したのは、リーとチームを組み、第二次世界大戦の前戦で取材をしてきたデイヴィッド・E・シャーマンです。

1907年4月23日、米国に生まれたリー・ミラーは、18歳の時にパリに渡った後、「VOGUE」などでファッションモデルとして活躍していました。その後、写真家に転身。本作では、1938年にフランスのムーシャンで芸術家のローランド・ペンローズと出逢った時期から第二次世界大戦終戦までにリーが過ごした日々に焦点を当てています。

© Lee Miller Archives, England 2025. All rights reserved.
リー・ミラー(ケイト・ウィンスレット)は、若いジャーナリスト(ジョシュ・オコナー)に質問され、彼女の体験を語っていきます。前半はリーが並々ならぬ行動力で写真家としてのキャリアを築いていく様子が描かれています。女性にはなかなか機会が与えられないなか、抜群のセンスと物怖じしない言動で、写真家としての道を切り拓いていく彼女の姿からはパワーをもらえます。

それから徐々に、彼女が撮影のために訪れた戦場での壮絶な経験、その経験によりどれだけ苦しんだかが描かれていきます。リーと、デイヴィッド・E・シャーマン(アンディ・サムバーグ)が目にした光景や、2人が打ちひしがれながらも撮影を続け、世に届けようとしていた姿を観ると、報道の意義を改めて実感します。

そして、最後にはリーのあまりに辛い過去が明かされる上に、本作に隠された別の真実にも驚かされます。ただ、その結末そのものに、リーの思いが引き継がれていることが描写されているともいえて、救いや癒やしも感じられます。

本作には、ケイト・ウィンスレットの他、アンディ・サムバーグ、アレクサンダー・スカルスガルド、マリオン・コティヤール、ジョシュ・オコナー、アンドレア・ライズボロー、ノエミ・メルランと他の作品出は主役も務める俳優陣が名を連ねている点も嬉しいポイントです。演技派の俳優陣の名演もあって、ストーリーに没頭できます。時代、場所を問わず、私達は世界で何が起きているのかを知る必要がある。そういう大切なことを改めて教えてくれる1作です。
デート向き映画判定

リーとローランド・ペンローズ(アレクサンダー・スカルスガルド)の関係はとてもロマンチックで、2人の強い絆に共感できるでしょう。ただ、重いテーマを扱っているので、気楽に過ごしたい日のデートには向かないと思います。2人とも本作に興味があれば、映画鑑賞をメインメニューにできる日に観ると良いと思います。
キッズ&ティーン向き映画判定

第二次世界大戦時のヨーロッパが舞台となっていて、ナチスドイツの支配下で何が起こっていたかを、実在した写真家の目で観ることができます。目を背けたくなるほどの実態、忘れてはいけない歴史を、時代や場所を越えて私達が知ることができるのは、こうしたジャーナリスト達の存在があるからです。本作鑑賞は、情報が氾濫する現代で情報の重みを改めて考える機会になると思います。

『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』
2025年5月9日より全国公開
カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト
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© BROUHAHA LEE LIMITED 2023
TEXT by Myson
関連作:
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
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情報は2025年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
