学び・メンタルヘルス

社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

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映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

SEL(社会性と情動の学習)の定義とSELで向上を目指す8つの社会的能力についてはこちら

心理学では、「自己」「自我」があらゆる角度から研究されています。その中でもよく知られている理論の一つに、精神科医ジークムント・フロイトの「心的構造論」があります。「心的構造論」では、「無意識」は、【エス(イド)、自我、超自我】で構成されると説明されています。この「自我」はエスと超自我のバランスをとる働きを担っていて、そのバランスが取れなくなると、心身に支障をきたすと考えられています。
フロイトの「無意識」と「心的構造論」については、詳しく取り上げた記事がありますので、こちらをご覧ください。

他にも昨今「自己肯定感」「自己効力感」「自尊心」というような言葉がよく取り上げられているように、自分自身をどう捉え、どう扱うかが、人が幸せに生きていく上で重要だと考えられています。

「自己肯定感」「自己効力感」「自尊心」については、一つひとつ別の機会に取り上げるとして、今回は、自分を見失った状態、自分を信じられない状態、自分らしく生きられない状態が、なぜ辛さを生むのかをイメージするために、「社会的成功が必ずしも本当の幸せとはいえない事例」として、実在のスター達の物語を紹介します。

ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

2025年4月4日より全国公開
監督・脚本・編集:モーガン・ネヴィル
出演:ファレル・ウィリアムス/スヌープ・ドッグ/ケンドリック・ラマー/ティンバランド/ジャスティン・ティンバーレイク/バスタ・ライムス/ジェイ・Z/プシャT/N.O.R.E./ダフト・パンク/グウェン・ステファニー
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

音楽の才能が開花し売れるまでの間、ファレル・ウィリアムスは自分らしさを存分に発揮しているように見えます。ただ、大物ヒットメーカーになると、彼をビジネスの道具のようにしか見ずに、あれやこれやと余計なことを吹き込む人間が寄ってきます。誰もがずっと絶好調ではいられないし、誰にでもスランプはあるとはいえ、社会的成功が大きくなればなるほど、関わる人間の数も多くなり、中には自分にとって好ましく人物も入ってきます。そして、周囲からの期待や依存も大きくなるので、プレッシャーが重くのしかかります。序盤で彼は「自分らしさ」に触れている点から、大きな社会的成功を手にしたからこそ、本当の幸せは別のところにあると知ったのではないかと推測できます。

BETTER MAN/ベター・マン

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス

2025年3月28日より全国公開中
監督:マイケル・グレイシー
出演:ロビー・ウィリアムス
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

映画『BETTER MAN/ベター・マン』映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス

ロビー・ウィリアムスは、父親から良くも悪くも大きな影響を受けていることがわかります。父親の愛に確信が持てない彼は、心にポッカリ穴が空いています。彼がスターになると、父親は近寄ってくるものの、不純な動機が見え隠れします。だから、どれだけスターになっても、父親からの愛が感じられない間は、ロビーは自分自身を認められず、苦しんでいるように見えます。

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN

映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ティモシー・シャラメ

2025年2月28日より全国公開中
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ/エドワード・ノートン/エル・ファニング/モニカ・バルバロ/ボイド・ホルブルック/ダン・フォグラー/ノーバート・レオ・バッツ/スクート・マクネイリー
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 ティモシー・シャラメ来日イベント

映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ティモシー・シャラメ

フォーク・シンガーとして人気を集めたボブ・ディランは、周囲から求められる自分であることと、自分自身がこうありたいと願う自分になることとの間で葛藤します。本作には、そうした苦悩を吐露する場面が複数見られます。そして、クライマックスで、彼は葛藤の末に自分の意思に従います。その後、より才能を開花させ、伝説のミュージシャンとなったのは、広く知られている通りです。

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今回は映画で描かれる、実在するスター達の人生を例に、社会的成功を成し遂げただけで本当の幸せが得られるわけではないこと、そして、自分らしくあることの大切さを考えてみました。もちろん、社会的成功を否定するわけではありません。ただし、社会的成功を成し遂げられたら絶対に幸せになれるというわけではない点は、今回紹介した例を含め、多くの社会的成功者の実話を描いた作品でも語られています。つまり、何が自分を幸せにするかを知っておく必要があり、そのためにも自分自身を深く知ることが大切だといえます。

© 2024 FOCUS FEATURES LLC
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.
©2025 Searchlight Pictures.

TEXT by 武内三穂(認定心理士)

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学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
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REVIEW

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  5. 映画『マインクラフト/ザ・ムービー』ジェイソン・モモア/エマ・マイヤーズ/ダニエル・ブルックス/セバスチャン・ハンセン

PRESENT

  1. 映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』ケイト・ウィンスレット
  2. 映画『けものがいる』レア・セドゥ
  3. DMM TVオリジナルドラマ『ドンケツ』伊藤英明
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